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MODULE 2・初級・約22分

サージ現象を理解する

サージとは、瞬間的に発生する異常な過電圧・過電流のこと。波形・侵入モード・結合メカニズム・LPZの考え方まで踏み込んで学びます。

1 サージ(surge)とは何か

サージとは、電力線・通信線・接地線などに瞬間的(マイクロ秒〜ミリ秒オーダー)に発生する、通常の使用電圧・電流を大きく超える過渡的な異常電圧・電流のことです。 持続時間が短いため「過渡現象(transient)」とも呼ばれます。

発生原因によって大きく2種類に分けられます。

雷サージ

雷放電に起因するサージ。直撃雷・誘導雷・逆流雷いずれの経路でも発生し、エネルギーが非常に大きいのが特徴です。

開閉サージ(スイッチングサージ)

遮断器の開閉、モーターやインバーターの起動・停止など、電気回路の急激な変化によって発生するサージ。雷サージよりエネルギーは小さいですが発生頻度は高めです。

その他のサージ源:静電気放電(ESD)、系統切替時の過渡現象、力率改善用コンデンサの投入時サージなども広義のサージに含まれます。

2 雷サージと開閉サージの比較

比較項目雷サージ開閉サージ
発生頻度低い(雷が発生した時のみ)高い(日常的な開閉操作で発生)
エネルギー非常に大きい比較的小さい
立ち上がり時間数µs程度ns〜µsオーダー(さらに速い場合も)
主な対策SPD(クラスI〜III)、接地・ボンディングSPD(クラスII〜III)、サージ吸収素子、スナバ回路

3 代表的なサージ波形

SPDの試験規格(JIS/IEC)では、サージを模擬するために標準化された波形が使われます。代表的な波形を比較してみましょう。

8/20µs 波形(電流波形)

波頭長8µs・波尾長20µsで立ち上がり、減衰する電流波形。誘導雷や配電線に侵入する雷サージ電流を模擬。SPDのクラスII試験(Inパルス)などで使用。

10/350µs 波形(電流波形)

波頭長10µs・波尾長350µsとエネルギー量がはるかに大きい波形。直撃雷の電流を模擬しており、クラスI試験(Iimpパルス)で使用されます。

※グラフは波形の形状イメージを示す模式図です(規格上の正確な数値波形ではありません)。

その他の代表的な試験波形

1.2/50µs(開放電圧波形)

サージの電圧波形を模擬。8/20µsの電流波形と組み合わせた「複合波(コンビネーションウェーブ)」として、SPDクラスIII試験に使用されます。

0.5µs/100kHz(リングウェーブ)

開閉サージを模擬した振動性の減衰波形。IEC 61000-4-12等で規定され、屋内配電系統でのサージ耐力評価に使われます。

4 サージの侵入モード

サージがどの経路で機器に侵入するかによって「ノーマルモード」「コモンモード」に分類されます。SPDの選定・設置にも直結する重要な考え方です。

L(電源線) N(電源線)
ノーマルモード(線間モード)

電線と電線の間に発生

例:電源のL線とN線の間に発生するサージ。機器の入力段(電源回路)に直接ストレスを与えるため、電源回路の破損につながりやすいモードです。

L・N(電源線) 大地(接地)
コモンモード(対地モード)

電線と大地(接地)の間に発生

L線・N線がまとめて対地電位に対して跳ね上がるモード。誘導雷や接地電位の上昇(逆流雷)で発生しやすく、通信機器・LAN機器の絶縁破壊の主要因になります。

5 結合メカニズムとLPZ(雷保護ゾーン)

誘導雷サージが線路に乗る仕組みは、主に2つの「結合(カップリング)」で説明されます。

電磁結合(インダクティブカップリング)

雷電流の急激な変化が発生する磁界の変化により、近くのループ状の配線に誘導起電力(サージ)を発生させる。

静電結合(キャパシティブカップリング)

雷雲や雷電流による電界の変化が、静電容量を介して近くの導体に電圧変化を及ぼす。

IEC 62305では、建物内外を電磁環境の厳しさに応じてLPZ(Lightning Protection Zone、雷保護ゾーン)という概念でゾーン分けします。

LPZ 0

建物外部。直撃雷・全磁界の影響を受ける

LPZ 1

建物内部(引込口)。SPDクラスIで一次減衰

LPZ 2

室内区画。SPDクラスIIで二次減衰

LPZ 3

機器直近。SPDクラスIIIで最終減衰

各ゾーンの境界にSPDを設置し、ゾーンが内側に進むごとにサージレベルを段階的に下げていく設計思想が「多段協調」の理論的な背景です(詳細はModule 3で解説)。

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