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MODULE 3・中級・約26分

避雷器(SPD)の仕組み

SPD(Surge Protective Device)は、サージを大地(アース)へ逃がして機器を保護する装置です。動作原理から実務選定フロー、多段協調設計まで学びます。

1 SPD(避雷器)とは

SPD(Surge Protective Device、日本語では「避雷器」や「サージ防護デバイス」)は、電源線や通信線に挿入し、 通常時は電気を流さず絶縁体として振る舞いながら、サージが発生した瞬間だけ低インピーダンスになってサージ電流を大地へ逃がし、機器を保護する装置です。

イメージで理解する

SPDは「安全弁」のようなものです。普段は閉じていますが、圧力(サージ電圧)が一定を超えた瞬間だけ開いて、余分な圧力(サージ電流)を逃がし道(接地線)へバイパスします。圧力が収まれば再び閉じて通常運転に戻ります。

2 動作原理(回路イメージ)

電源/信号線 保護機器 SPD 大地(接地) サージ侵入

① 通常時:SPDは高インピーダンス(絶縁状態)で、通常の電力・信号伝送には影響を与えません。

② サージ発生時:電圧が動作開始電圧(制限電圧)を超えると、SPDは瞬時に低インピーダンス化し、サージ電流を接地線経由で大地に逃がします。

③ 復帰:サージが収まるとSPDは元の高インピーダンス状態に戻り、機器はサージ通過時のわずかな電圧上昇(制限電圧)のみを受けて保護されます。

SPDの効果は接地(アース)が適切に施工されていて初めて発揮されます。SPDと接地は必ずセットで考える必要があります(Module 4で詳しく解説)。

3 SPDのクラス(試験区分)

IEC 61643規格ではSPDを試験波形によってクラスI〜IIIに区分しています(JIS等では「I〜III型」等の呼称も併用されます)。設置位置に応じて使い分け、多段で組み合わせるのが基本です。

クラス 試験波形 主な設置場所 役割
クラスI
(粗保護)
10/350µs
(電流波形 Iimp)
引込口・分電盤(建物の入り口) 直撃雷に伴う大エネルギーの電流を受け止める一次防護
クラスII
(中間保護)
8/20µs
(電流波形 In)
分電盤・幹線系統 誘導雷サージなど中程度のエネルギーを吸収する二次防護
クラスIII
(精密保護)
1.2/50µs+8/20µs
(複合波)
機器直近のコンセント・末端 残留サージを機器の許容範囲までさらに抑える最終防護

多段保護(協調)の考え方:1つのSPDで全てを吸収するのではなく、建物入口(クラスI)→分電盤(クラスII)→機器直前(クラスIII)と段階的にサージを減衰させる「協調」設計が推奨されます。

4 SPDに使われる主な素子

ギャップ式(放電ギャップ)

2つの電極間の空間放電を利用。大電流を扱えるためクラスI用途に多いが、応答速度はやや遅め。動作後は短絡状態を保つ「後続電流」の遮断能力も選定基準になります。

バリスタ(酸化亜鉛素子/MOV)

電圧依存性抵抗素子。応答が速く広く普及。ただし繰り返しサージで劣化し、経年劣化の監視が必要。

アバランシェダイオード等

半導体接合の降伏現象を利用。応答が非常に速く、通信・信号回路など精密機器の保護(クラスIII)に使われる。

複合型SPD(ハイブリッド構成)

実際の製品では、大電流対応のギャップ式・バリスタとインダクタ(デカップリング素子)を組み合わせ、1台でクラスI+IIの性能を兼ねる「Type1+2」等の複合型SPDも普及しています。設置スペースや工事コストの制約が大きい現場でよく採用されます。

5 選定の実務フロー

  1. 1

    リスク評価:建物の避雷設備有無、地域の落雷リスク(雷密度Ng等)、LPLを踏まえてリスクレベルを見積もる。

  2. 2

    設置位置の決定:引込口・分電盤・機器直近のどこにSPDが必要か、LPZ境界を意識して配置を検討する。

  3. 3

    クラスの選定:設置位置に応じてクラスI〜IIIを選び、上流・下流のSPDとエネルギー協調がとれているか確認する。

  4. 4

    定格の確認:Uc(最大連続使用電圧)が系統電圧に適合し、Up(電圧保護レベル)が保護対象機器の絶縁耐力より十分低いことを確認する。

  5. 5

    配線・接地の設計:リード線を最短配線とし、接地抵抗・接地系統(統合接地)が十分であることを確認する。

  6. 6

    保守計画:劣化表示・遠隔監視の有無を確認し、定期点検・交換サイクルを維持管理計画に組み込む。

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SPDと接地端子・母線を接続するリード線は、できる限り短く・太く・直線的に配線する必要があります。配線が長いとインダクタンスが増え、SPDの制限電圧に加えて配線のL・di/dtによる電圧が上乗せされ、保護効果が大きく低下します(一般に「リード線は最短で」が原則)。

バリスタ素子等は繰り返しサージを吸収するたびに徐々に劣化します。多くのSPDには劣化表示(インジケーター)や遠隔監視接点が付いており、定期点検・交換のサイクルに組み込むことが重要です。

6 多段協調設計と保護距離

複数のSPDを多段で設置する際、上流側SPDが確実に先に動作し、下流側SPDへの負荷を軽減する「エネルギー協調」が取れているかを確認する必要があります。協調が不十分だと、下流側のSPDだけに過大なエネルギーが集中して破損することがあります(協調にはSPD間の配線長やインダクタンスも影響します)。

もう一つ重要な概念が「保護距離」です。SPDから保護対象機器までの配線が長いと、配線のインダクタンスにより機器側で発生する振動電圧(オーバーシュート)が増加し、SPDの制限電圧だけでは機器を守れないことがあります。一般に機器から数m以上離れる場合は、機器直近に追加のクラスIII SPDを設置することが推奨されます。

実務ポイント:保護距離の問題は、特に長い配線を持つ工場・倉庫・大規模施設で顕在化しやすく、SPDのクラス選定だけでなく「どこにSPDを追加設置するか」の配置計画が重要になります。

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