コース目次/Module 6
MODULE 6・上級・約20分

ケーススタディ

現場でよくある被害パターンを4つのシナリオで確認し、原因の切り分けと対策の考え方を「逆引き」で学びます。

1 データセンターの誘導雷被害

状況:あるデータセンターで、雷が発生した日の翌朝、複数のスイッチとルーターのLANポートが一斉に故障し、社内ネットワークが停止した。落雷地点は施設から約1.5km離れた場所だった。

STEP 1: 事象の切り分け

施設への直撃雷ではなく、1.5km離れた地点への落雷だったため、直撃雷や逆流雷ではなく誘導雷による被害の可能性が高いと判断。

STEP 2: 被害パターンの分析

被害が電源系ではなくLANポートに集中していたことから、通信線側へのコモンモードサージの侵入が疑われた。

STEP 3: 根本原因の特定

調査の結果、通信線用SPD(クラスIII、信号用)が未設置であり、電源系にはSPDがあったものの、LAN配線には保護対策がなかったことが判明。

STEP 4: 対策

全てのLAN配線の建物侵入口に通信用SPDを設置し、機器ラック単位でも保護を追加。あわせてラック間の接地ボンディングも見直した。

教訓:電源系のSPDだけでは不十分。通信・信号線を含めた全ての「建物に入ってくる線」を保護対象として洗い出すことが重要(Module 2・3で学んだコモンモード対策の実例)。

2 工場PLCの逆流雷被害

状況:ある工場で、避雷針が設置された建物への直撃雷があった数分後、複数のPLC(制御機器)が同時に故障し、生産ラインが停止。SPDは設置されていた。

STEP 1: 事象の切り分け

直撃雷の直後に複数機器が同時故障したことから、逆流雷(接地電位上昇による被害)の可能性を重視。

STEP 2: 接地状況の調査

建物の接地を測定したところ、避雷設備用の接地極とPLCが接続された制御盤の接地極が別系統で、電気的に十分接続されていないことが判明。

STEP 3: 根本原因の特定

落雷時、避雷設備側の接地極の電位が瞬間的に大きく上昇。制御盤側の接地は別系統のため電位差が生じ、その差がPLCの入出力回路を破壊した。

STEP 4: 対策

避雷設備・制御盤・電源系統の接地極を等電位ボンディングにより統合。加えてPLCのI/O信号線側にも適切なSPDを追加設置した。

教訓:SPDが設置されていても、接地系統が分離していれば逆流雷を防げない。Module 4で学んだ「共用接地・等電位ボンディング」の重要性を示す典型例。

3 病院の等電位ボンディング不備

状況:増築を繰り返してきた病院で、雷が多い時期になると特定の検査室の電子医療機器で原因不明の誤動作やエラー表示が頻発するようになった。

STEP 1: 事象の切り分け

機器の破損ではなく「誤動作」にとどまっていたことから、小規模なノイズ・電位差レベルの影響(サージによる誤動作)を疑った。

STEP 2: 施設履歴の確認

当該検査室は増築部分にあり、新旧の建物で接地系統が完全に統合されていない可能性が浮上。

STEP 3: 根本原因の特定

増築時の接地工事が既存建物の接地系と十分にボンディングされておらず、雷サージ時に微小な電位差が生じ、精密機器の基準電位を乱していたことが判明。

STEP 4: 対策

新旧建物の接地系統を等電位ボンディングバー(EBB)で統合し、検査室内の医療機器周りにも局所的なボンディングを追加した。

教訓:破損に至らない「誤動作」レベルの被害でも、増築・改修履歴のある建物では接地系統の統合状況を疑う価値がある。医療機器のように電位差の影響を受けやすい設備では特に重要。

4 戸建住宅への直撃雷

状況:周囲より高い立地にある戸建住宅の屋根アンテナに直撃雷があり、テレビ、ルーター、給湯器の制御基板などが同時に故障した。避雷針・SPDはいずれも未設置だった。

STEP 1: 事象の切り分け

アンテナへの直撃を目撃者が確認しており、直撃雷による被害と特定は容易だった。

STEP 2: 被害拡大の要因分析

アンテナから侵入した雷電流が同軸ケーブル経由でテレビを破壊、さらに屋内配線を経由して電源系統にもサージが伝播し、複数の家電が被害を受けた。

STEP 3: 根本原因の特定

一般的な戸建住宅では避雷針が設置されていないことが多く、本件も対策が皆無だったため、雷エネルギーがそのまま屋内配線網全体に伝播した。

STEP 4: 対策(再発防止)

分電盤にクラスII SPDを設置し、テレビ用のアンテナ線にも同軸ケーブル用SPDを追加。あわせてD種接地の接地抵抗を測定・改善した。

教訓:一般住宅でも高い立地や周辺環境によっては直撃雷リスクがある。分電盤SPD+接地の見直しという最低限の対策でも被害を大きく軽減できる。

Module 6 小テスト

全モジュール完了後は

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