コース目次/Module 4
MODULE 4・中級・約26分

接地(アース)の役割

接地は感電防止・機器保護・雷害対策すべての土台です。A〜D種接地、接地極の種類、等電位ボンディング、接地系統の基礎まで学びます。

1 接地(アース)とは何か

接地(アース)とは、電気機器の金属部分や避雷設備・SPDなどを導体(接地線・接地極)で大地に接続することです。目的は大きく3つあります。

感電防止

漏電時に機器の金属部に人が触れても、電流が接地側の低抵抗経路に流れることで感電の危険を大幅に低減します。

機器保護・電位安定

ノイズやサージを大地に逃がし、機器の基準電位を安定させることで誤動作や故障を防ぎます。

雷電流の放流

避雷針やSPDが受け止めた雷電流を、安全に大地へ拡散・放流するための唯一の出口が接地です。

どれだけ優れたSPDを設置しても、接地が不十分(接地抵抗が高い、配線が細い・長い等)だと、サージ電流が逃げ切れず機器保護の効果が大きく損なわれます。接地はSPD対策の「土台」です。

2 接地工事の種類(A種〜D種)

日本の電気設備技術基準では、用途・電圧に応じて接地工事をA〜D種に区分し、それぞれ接地抵抗値の基準が定められています。

種別 接地抵抗値の目安 主な適用対象
A種 10Ω以下 高圧・特別高圧用機器の外箱、避雷設備など(最も厳しい基準)
B種 変圧器の高圧側電路の1線地絡電流により変動
(計算式に基づき決定)
高圧・低圧を結合する変圧器の低圧側中性点
C種 10Ω以下
(0.5秒以内遮断時は500Ω以下)
300Vを超える低圧機器の金属製外箱等
D種 100Ω以下
(0.5秒以内遮断時は500Ω以下)
300V以下の低圧機器の金属製外箱等(最も一般的)

※数値は電気設備技術基準に基づく代表的な基準です。詳細な適用条件・遮断時間等は最新の法令・規格でご確認ください。

3 接地抵抗と電位上昇

接地抵抗とは、接地極から大地全体に電流が広がっていく際の抵抗値です。オームの法則(V = I × R)により、同じ雷電流(I)が流れても、接地抵抗(R)が高いほど接地電位(V)は大きく跳ね上がります。

例:雷電流 10,000A が接地極に流れた場合の電位上昇

接地抵抗 10Ω の場合

100,000V

接地抵抗 100Ω の場合

1,000,000V

接地抵抗が10倍になると、同じ電流でも接地電位上昇も10倍になります。これが「逆流雷」で機器が破壊される主な要因です。

だからこそ、接地抵抗はできるだけ低く保つ(接地極を増やす、埋設深さや土質を工夫する、接地極同士を連接する等)ことが、雷害対策・感電防止の両面で重要になります。

測定方法:一般的には接地抵抗計を用い、補助接地極を2本使用する「電位降下法(3点法)」で測定します。定期的な測定・記録が電気設備の維持管理において重要です。

4 接地極の種類と土壌の影響

接地棒(垂直接地極)

銅または銅めっき鋼の棒を地中に垂直に打ち込む方式。設置が簡単で最も普及している方式。深く打つほど接地抵抗が下がる傾向がある。

接地板・接地網(メッシュ)

板状または網状の導体を浅く埋設する方式。広い面積で低抵抗を得やすく、変電所や大規模施設の接地システムでよく用いられる。

連接接地極

複数の接地極を導体で連接し、全体として1つの接地系として機能させる方式。単独の接地極では基準を満たせない場合に用いられる。

構造体接地(基礎接地)

建物の鉄筋・基礎そのものを接地極として利用する方式。大きな表面積を持つため低抵抗が得やすく、近年多くの建物で採用されている。

土壌が接地抵抗に与える影響

接地抵抗は接地極の形状だけでなく、土壌そのものの電気抵抗(大地抵抗率)に大きく左右されます。含水率や土質によって数十倍〜数百倍の差が出ることもあります。

土質大地抵抗率の傾向
湿った粘土質低い(接地抵抗が下がりやすい)
一般的な土壌中程度
乾燥した砂地高い
岩盤・凍結地非常に高い(接地抵抗が下がりにくい)

乾燥した砂地や岩盤地帯では、接地極を複数連接したり、深く埋設したり、接地抵抗低減剤を使用するなどの工夫が必要になります。

5 等電位ボンディングという考え方

建物内 各種設備 配電盤 通信機器 配管 避雷設備 サーバー EBB 共通接地(大地)

建物内の配電盤・通信機器・配管・避雷設備など、性質の異なる金属体をそれぞれ別々に接地すると、雷サージ発生時に各接地点の電位が瞬間的にバラバラに変動し、その電位差によって機器間で「地絡・飛び火」が起きることがあります。

等電位ボンディング(Equipotential Bonding)とは、こうした金属体を導体(ボンディング線)で相互に接続し、共通の接地系(共用接地)にまとめることで、雷サージ時にも建物内の電位差をできるだけ小さく保つ設計手法です。図中の「EBB」は等電位ボンディングバー(Equipotential Bonding Bar)を示します。

IEC 62305(雷保護規格)でも、内部雷保護対策の柱として等電位ボンディングが位置づけられています。

6 接地系統(TT/TN/IT)の基礎

IEC 60364規格では、電源系統の接地方式と機器の接地方式の組み合わせを、2文字のアルファベットで分類しています(TN方式はさらにTN-S/TN-C/TN-C-Sに細分されます)。

系統電源側の接地機器側の接地特徴
TT系統 直接接地 機器側で個別に接地 日本の低圧配電で一般的。漏電時はRCD(漏電遮断器)での保護が基本。
TN系統 直接接地 電源側の接地線(PE)に接続 欧州で広く採用。地絡時に大きな電流が流れ、過電流保護で早期遮断しやすい。
IT系統 非接地または高インピーダンス接地 機器側で個別に接地 1線地絡時も運転継続が可能。病院の手術室等、事業継続性が重視される場所で使われる。

日本の一般的な低圧配電はTT系統に近い考え方(電源側はB種接地、機器側はD種等の個別接地)が採用されています。系統の種類はSPD選定(特に接地系統に応じたSPDの回路構成)にも影響するため、実務では設計図面での確認が必要です。

よくある疑問

かつては用途別に接地極を分離する考え方もありましたが、現在は等電位ボンディングの観点から、可能な限り「共用接地(統合接地)」とし、電位差の発生を抑える設計が主流です。ただし各設備の接地種別ごとの抵抗値基準は満たす必要があります。

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